スタッドレスタイヤへの履き替えで、いちばん手間がかかるのはホイールナットを外す作業です。手回しのクロスレンチでも外せますが、4本分を何度も回すと時間がかかります。充電式のインパクトレンチなら、ナットを回して外す作業を電動に任せられます。
ただし、インパクトレンチは外すための道具で、締め付けの最終確認は別の道具で行います。メーカーの取扱説明書にも、締め付けたボルトが適正なトルクかをトルクレンチなどで必ず確認するよう書かれています。この記事では、マイカーのタイヤを履き替える人向けに、スタッドレス履き替えでナットを外す用途で、マキタとHiKOKIの公式仕様がそろう5点を、締付トルク・電圧・質量・セット内容で見比べます。価格は2026年11月2日時点の掲載価格をもとにした帯表記で、変動します。
メナ先に結論です。インパクトレンチで外し、ナットを仮に締めるところまで。規定トルクの本締めは、トルクレンチで行います。
結論:トルクの大きさより、電池と本体のそろえ方で選ぶ
結論として、乗用車のホイールナットを外すだけなら、最大トルクが大きいほど良いわけではありません。手持ちの電池が使えるか、本体のみかフルセットか、重さを持て余さないか、の順に決めると迷いません。
| こんな人 | 選ぶ機種 | 理由(公式仕様) |
|---|---|---|
| とにかく軽く、本体のみで安く揃えたい | マキタ TW302DZ | 質量1.7kg(BL1860B装着時)、最大275N・m。バッテリーと充電器は別売 |
| マキタの電池資産がなく、一式で揃えたい | マキタ TW300DRGX | 18V6Ahバッテリ2本・充電器・ケース付。最大300N・m |
| M22など太いボルトも外す場面がある | マキタ TW700DRGX | 最大600N・m。質量2.6kg(BL1860B装着時) |
| HiKOKIの18Vで揃える | HiKOKI WR18DH | 最大締付け310N・m、最大ゆるめ550N・m |
| HiKOKIのマルチボルト36Vで揃える | HiKOKI WR36DH | 最大締付け350N・m、最大ゆるめ650N・m |
先に整理:インパクトドライバーでは代わりになりません
見た目が似ていますが、インパクトドライバーは六角軸のビットを付けてネジを回す工具です。ホイールナットにはソケットを付ける四角の差込角が必要で、ここにソケットを付けられるのがインパクトレンチです。すでにインパクトドライバーを持っている人も、タイヤ交換用には差込角のあるレンチ型を別に用意する形になります。
| 比較点 | インパクトレンチ | インパクトドライバー |
|---|---|---|
| 先端 | 四角の差込角にソケットを付ける | 六角軸にビットを付ける |
| 得意な作業 | ボルト・ナットの締め外し | ネジ・ビスの締め付け |
| この記事の対象 | ホイールナットを外す | DeWalt DCFインパクトの比較で扱っています |
履き替えの手順:インパクトで外し、トルクレンチで本締め
車の持ち上げ方やナットの締め付けトルクは、車両の取扱説明書に従います。この記事は、その手順のうち「ナットを外す」「仮に締める」を電動に置き換える考え方です。ジャッキ・輪止め・クロスレンチなど安全に作業するための道具は、タイヤ交換の工具と安全な手順の記事にまとめています。
①外す:インパクトレンチで対角線の順にゆるめる
ソケットをナットに奥まで入れ、対角線の順に1本ずつゆるめて外します。ホイールが浮かないよう、車両の取扱説明書で指定された状態で行ってください。
②仮締め:インパクトでは軽く当たる位置までで止める
履き替えたホイールのナットは、インパクトレンチでは軽く当たるところまでに留めます。最後まで打撃で締め込むと、締め付けすぎの原因になります。マキタの取扱説明書にも、ボルトを過大な締め付けトルクで締めるとボルトが伸びたり折損したりすることがある、と書かれています。
③本締め:トルクレンチで規定トルクに合わせる
規定トルクは車種ごとに違い、車両の取扱説明書に書かれています。この数値をトルクレンチに設定して、対角線の順に締めます。ホイールナット向けのトルクレンチは、トルクレンチとホイールナットの選び方の記事で比較しています。



インパクトは外す道具、トルクレンチは締める道具。役割を分けるのが、安全のいちばんの近道です。
選び方の4点:18V・36Vの電圧・トルク・セット内容・ソケット
①最大トルクは「足りる」で十分。大きすぎる機種は加減が要る
メーカー公式の最大締付けトルクは、5点で275N・mから600N・mまで開いています。ホイールナットを外す用途では、まず外せるだけの余裕があるかを見ます。600N・m級の機種は、太いボルトまで対応する分、仮締めのときの加減に気を配る必要があります。
②電圧は、すでに持っている電池に合わせる
マキタTW302DZ・TW300D・TW700Dは18V、HiKOKI WR18DHは18V、WR36DHはマルチボルト36Vです。電動工具はメーカーを超えて電池が使えないため、マキタの18Vを持っている人はマキタ、HiKOKIの電池を持っている人はHiKOKIを選ぶのが基本です。
③本体のみか、バッテリー付きのフルセットかを確認する
TW302DZ、WR18DH、WR36DHは本体のみで、バッテリーと充電器は別売です。TW300DRGXとTW700DRGXは、18V6Ahバッテリ2本・充電器・ケース付の構成です。同じ型番のモデルでも、本体のみの販売と、バッテリー1本付き・2本付きなど販売店ごとにセット内容が違う場合があるため、購入前に販売ページの「付属品」を確認してください。
④ソケットは別売。ナットの二面幅を確認してから揃える
5点とも、ソケットは別売です。マキタのTW302D取扱説明書には、別販売品として17mm・19mm・21mmの9.5角ソケットが載っています。ホイールナットの二面幅は車種で変わるため、車両の取扱説明書で確認してから、差込角(9.5mm角か12.7mm角か)に合う、インパクトレンチ用のソケットを選びます。
タイヤ交換用の電動インパクトレンチおすすめ5選
マキタ3点とHiKOKI2点です。数値は、マキタは公式取扱説明書、HiKOKIは公式製品ページの記載で、質量はバッテリーの装着条件が機種ごとに違う点に注意してください。
マキタ 充電式インパクトレンチ TW302DZ|最大275N・m、本体のみの18V
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 電圧 | 18V |
| 最大締付けトルク | 275N・m(M16・F10T高力ボルト、打撃モード4、3秒締付時) |
| 最大ゆるめトルク | 公式記載なし |
| 差込角(公式記載) | 9.5角ソケットの設定(別販売品の項) |
| 質量 | 1.7kg(BL1860B装着時) |



5点の中では最も軽く、最大トルクも小さい1台です。
マキタTW302DZは、最大締付けトルク275N・m、質量1.7kg(BL1860B装着時)の18Vモデルです。打撃数は打撃モードの4段階で切り替えられ、モード4(最速)は0〜4,000min-1、モード1は0〜1,800min-1と公式仕様表に載っています。


ターゲットは、マキタの18Vバッテリーをすでに持っていて、本体のみで揃えたい人です。シーズンに数回、家族の車の履き替えをする使い方なら、軽さが取り回しに効きます。
差込角は9.5mm角のソケットが設定されています。ナットに合うソケットを別に用意する前提で、ソケットは車の取扱説明書で確認した二面幅から選びます。最大ゆるめトルクは、公式の取扱説明書に記載がありません。
マキタ 充電式インパクトレンチ TW300DRGX|最大300N・m、バッテリ2本付きのフルセット
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 電圧 | 18V |
| 最大締付けトルク | 300N・m(M16・F10T高力ボルト、3秒締付時) |
| 最大ゆるめトルク | 公式記載なし |
| 差込角(公式記載) | 12.7mm角ソケットの設定(別販売品の項) |
| 質量 | 1.8kg(BL1860B装着時) |



バッテリと充電器が付くので、電池を持っていない人の最初の1台になります。
マキタTW300DRGXは、TW300Dに18V6Ahバッテリ2本・充電器・ケースが付くフルセットです。最大締付けトルクは300N・m、質量は1.8kg(BL1860B装着時)です。


ターゲットは、マキタの電池を持っておらず、バッテリー・充電器・ケースまで1回で揃えたい人です。バッテリが2本あるため、1本を充電している間に作業を続けられます。
TW302DZより本体は重く、最大トルクが25N・m大きくなります。普通ボルトはM10〜M20、高力ボルトはM10〜M16が適用です。最大ゆるめトルクは、公式に記載がありません。
マキタ 充電式インパクトレンチ TW700DRGX|最大600N・m、太いボルトまで対応
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 電圧 | 18V |
| 最大締付けトルク | 600N・m(M22・F10T高力ボルト、3秒締付時) |
| 最大ゆるめトルク | 公式記載なし |
| 差込角(公式記載) | 12.7mm角ソケットの設定(別販売品の項) |
| 質量 | 2.6kg(BL1860B装着時) |



5点で最大トルクが最も大きい分、乗用車の仮締めでは加減が要ります。
マキタTW700DRGXは、18V6Ahバッテリ2本・充電器・ケース付のフルセットで、最大締付けトルクは600N・m、質量2.6kg(BL1860B装着時)です。普通ボルトはM10〜M24が適用範囲です。


ターゲットは、ホイールナットのほかに、M20を超えるような太いボルトも外す機会がある人です。乗用車のタイヤ交換だけが目的なら、この機種は余裕が大きすぎます。
質量は5点でいちばん重く、長さも170mmと大きくなります。仮締めのときは打撃を最小限に留め、本締めは必ずトルクレンチで行います。最大ゆるめトルクは、公式に記載がありません。
HiKOKI コードレスインパクトレンチ WR18DH(NN)|最大310N・m、ゆるめ550N・mの18V
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 電圧 | 18V |
| 最大締付けトルク | 310N・m(M20高力ボルト・強度区分F10T、六角ソケット使用、締付け時間3秒) |
| 最大ゆるめトルク | 550N・m |
| 差込角(公式記載) | 四角ドライブ 12.7mm |
| 質量 | 2.0kg(BSL36A18X装着時) |



ゆるめトルクが公式に載っているので、固着したナットを外す前提の選び方ができます。
HiKOKI WR18DH(NN)は、公式製品ページに最大締付けトルク310N・m、最大ゆるめトルク550N・mが載っている18Vモデルです。差込角は四角ドライブ12.7mm、質量は2.0kg(BSL36A18X装着時)です。


ターゲットは、HiKOKIの18Vバッテリーをすでに持っている人です。数年履いたまま固着ぎみのナットを外す場面では、ゆるめ側の数値が公式にある点が選ぶ材料になります。
商品は本体のみ(NN)で、バッテリーと充電器は別に必要です。打撃数は4段階で、最速の4が0〜4,000min-1、1が0〜1,600min-1と公式ページに書かれています。
HiKOKI マルチボルト36V コードレスインパクトレンチ WR36DH(NN)|最大350N・m、ゆるめ650N・m
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 電圧 | マルチボルト 36V |
| 最大締付けトルク | 350N・m(M20高力ボルト・強度区分F10T、六角ソケット使用、締付け時間3秒) |
| 最大ゆるめトルク | 650N・m |
| 差込角(公式記載) | 四角ドライブ 12.7mm(先端形状) |
| 質量 | 2.0kg(BSL36A18BX装着時) |



HiKOKIのマルチボルトで電池を共用する人向けの1台です。
HiKOKI WR36DH(NN)は、マルチボルト36Vのバッテリーで使うモデルで、公式製品ページに最大締付けトルク350N・m、最大ゆるめトルク650N・mが載っています。質量は2.0kg(BSL36A18BX装着時)です。


ターゲットは、HiKOKIのマルチボルト36V電池を草刈機や他の工具ですでに使っている人です。同じ電池を共用できます。マルチボルトの工具は、HiKOKIマルチボルト36V対応工具の記事で一覧にしています。
商品は本体のみ(NN)で、バッテリーと充電器は別に必要です。公式ページの数値は、気温20℃満充電時の値です。普通ボルトはM10〜M20、高力ボルトはM10〜M16が適用範囲です。
5点の比較表:トルク・質量・セット内容・価格帯
質量は、マキタがBL1860B装着時、HiKOKIがBSL36A18X(WR18DH)・BSL36A18BX(WR36DH)装着時の公式値です。価格帯は2026年11月2日時点の掲載価格をもとにした帯表記で、モールやタイミングで変わります。
最大締付けトルクの測定条件はメーカー・機種で異なります(マキタはM16またはM22の高力ボルト、HiKOKIはM20の高力ボルト)。数値の大小だけで優劣を決めず、条件も合わせて見てください。
| 商品 | 電圧 | 最大締付け | 最大ゆるめ | 質量 | セット内容 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| マキタ TW302DZ | 18V | 275N・m | 公式記載なし | 1.7kg | 本体のみ | 2万円台前半 |
| マキタ TW300DRGX | 18V | 300N・m | 公式記載なし | 1.8kg | 6Ah電池2本・充電器・ケース | 6万円前後 |
| マキタ TW700DRGX | 18V | 600N・m | 公式記載なし | 2.6kg | 6Ah電池2本・充電器・ケース | 7万円前後 |
| HiKOKI WR18DH(NN) | 18V | 310N・m | 550N・m | 2.0kg | 本体のみ | 2万円台前半〜半ば |
| HiKOKI WR36DH(NN) | 36V | 350N・m | 650N・m | 2.0kg | 本体のみ | 2万円台前半 |
履き替えのあとに:空気圧と電池の管理
タイヤを付け替えたら、空気圧の確認が続きます。常時見張りたい人はTPMS(タイヤ空気圧モニター)の比較、自宅でさっと入れたい人は電動空気入れの比較が参考になります。
マキタ・HiKOKIなど電動工具のメーカーごとの違いは、電動工具メーカーランキングの記事にまとめています。バッテリーを共用できる工具が増えるほど、1台あたりのコストは下がります。
タイヤ交換用インパクトレンチのよくある質問
インパクトレンチでナットを最後まで締めてもいいですか?
勧められません。マキタの取扱説明書には、締め付けたボルトが適正締め付けトルクになっているか、トルクレンチなどで必ず確認するよう書かれています。仮締めまでをインパクト、規定トルクの本締めはトルクレンチ、と分けてください。
インパクトドライバーでホイールナットは外せますか?
ソケットを付ける四角の差込角がないため、基本的にはレンチ型を選びます。インパクトドライバーの差込口は六角軸で、ホイールナット用のソケットとは規格が違います。
600N・m級の機種は乗用車に使えますか?
外すだけなら使えますが、ボルトの伸びや折損を避けるため、仮締めは慎重にします。乗用車が主な用途なら、600N・m級でなくても候補になります。固着しているナットの場合は、最大ゆるめトルクの公式値も見てください。
規定トルクは何N・mにすればよいですか?
車種ごとに違うため、この記事では数値を挙げません。車両の取扱説明書に書かれた値を、トルクレンチに設定してください。
あわせて読みたい
本締めのトルクレンチは、トルクレンチとホイールナットの選び方へ。
ジャッキ・輪止め・クロスレンチなどの安全な手順は、タイヤ交換の工具の記事をどうぞ。
履き替え後の空気圧は、TPMSの比較と電動空気入れの比較が参考になります。
まとめ
タイヤ交換用の電動インパクトレンチは、電池をそろえる方向で選びます。マキタの18Vを持っているならTW302DZ、電池ごと揃えるならTW300DRGX、太いボルトも外すならTW700DRGXです。HiKOKIを使っているなら、18VはWR18DH、マルチボルト36VはWR36DHが候補になります。
どの機種でも、インパクトレンチで外し、仮締めまで。規定トルクの本締めはトルクレンチで行ってください。






























