車・バイク整備と設備保全のベアリングプーラー選び方|内掛け・外掛け・爪数・適合径を用途で判定

スーパーツール ギヤープーラ(GL型) GL6
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この記事は、車やバイクの整備でハブやホイールのベアリングを交換する方、また工場や設備の保全でモーター・ポンプ・減速機のベアリングを交換する方向けに書いています。

機種を先に比較するのではなく、外す対象の形状(外側から爪を掛けられるか、ハウジングの止まり穴に内輪だけが残っているか、爪の入る隙間が全くないか)・適合径・必要な引抜き力から、内掛け・外掛け・爪の数・適合径のどれを基準に選ぶべきかを判定できるようにすることが、この記事の目的です。

目次

ベアリングプーラーは「機種」より先に、ご自身の作業条件を決める

ベアリングプーラーは、外掛け式か内掛け式か、セパレーター併用が必要か、適合径がどの範囲か、必要な引抜き力(破断荷重)がどれくらいか、といった組み合わせで種類とサイズが決まります。先に機種名から探すと選択肢が多すぎて絞り込めません。まず作業条件を決めてから、それを満たす機種を判定するほうが遠回りになりません。

結論早見表|読者の条件→必要スペック→該当機種

ご自身の作業条件に近い行を見つければ、必要なスペックと該当する機種の候補がわかります。各機種の詳しい根拠は、このあとのスペックごとの解説と商品カードの節にまとめています。

読者の条件必要スペック該当機種(本記事で紹介)
ハウジングの止まり穴(ブラインドホール)に内輪だけが残っている内掛け・コレット式、適合径8〜25mm程度(STRAIGHT/ストレート) パイロットベアリングプーラーセット 19-603
取付スペースが限られ、支えアーム式の力の掛け方ができない(内掛け併用)内掛け+スライドハンマー式KUKKO スライドハンマーセット KS-22-02
ベアリング・ギヤが面一で、爪の入る隙間が全くないセパレーター併用、適合プーラGL6・PP2スーパーツール ベアリングセパレータ BS-2(GL6と併用)
軸に残ったベアリング外径が60〜150mm程度で、外側から爪を掛けられる外掛け・2穴/3穴兼用、破断荷重60kN程度スーパーツール ギヤープーラ(GL型) GL6
小径ベアリング(外径24〜55mm程度)、電装品・自動車の小物整備外掛け小型、破断荷重8kN程度スーパーツール アマチュアベアリングプーラ AB2N
圧入が固く、大径(150〜375mm程度)で手動ネジ式では抜けない油圧式、最大荷重140kN程度スーパーツール 2本爪油圧プーラセット GLP15
抜去後、新しいベアリングを圧入で組み付ける圧入用の打込み工具(ベアリングドライバー)(STRAIGHT/ストレート) ベアリングレースシールドライバー 19-8706

早見表の読み方|判定の具体例3つ

早見表を実際にどう使うか、3つの作業条件で判定の流れを解いてみます。

例1: ハウジングの止まり穴に内輪だけが残っている

外側から爪を掛けられる外形がなく、止まり穴(ブラインドホール)に内輪だけが残っている場合、外掛け式プーラーの爪は掛かりません。内径に押し広げて食い込むコレット式の内掛けが必要で、早見表の1行目に当てはまります。(STRAIGHT/ストレート) パイロットベアリングプーラーセット 19-603が候補です。

例2: ベアリングとギヤが面一で、爪の入る隙間が全くない

対象が面一で密着していて、外掛け式プーラーの爪を差し込む隙間自体がない場合は、プーラー単体では対応できません。セパレーターを対象の背後にかませてすき間を作り、そこに外掛け式プーラーの爪を掛けて引き抜く、という2段階の判定になります。スーパーツール ベアリングセパレータ BS-2を、適合する外掛け式プーラーGL6と併用する組み合わせが候補です。

例3: 自動車の発電機など、外径24〜55mm程度の小径ベアリングを外掛けで交換したい

対象の外径が24〜55mm程度の小径であれば、中型の外掛け式プーラーでは本体サイズが大きすぎ、取付自体がしにくくなります。この径帯には小径専用のスーパーツールアマチュアベアリングプーラAB2Nが候補になります。

スペックは何のためにあるのか|スペック→用途の変換

早見表の「必要スペック」欄が、具体的にどういう場面でどう効くのかを、判定の3つの軸ごとに解説します。スペックを並べて覚えるのではなく、ご自身の作業条件に当てはめて読んでください。

① 外す対象の形状(外掛け可能か、ブラインドホールか、隙間ゼロか)

軸に残った対象の背面に爪を掛けられる外形がある場合は、外掛け式(フックボルト式のG/GL/GT型)で対応できます。爪数(爪の穴の数)は2穴(G4〜10)と3穴(G12〜24)の兼用構造のものや、3本爪専用のGT型があり、対象の外形に合わせて爪の掛かる範囲を調整します。ハウジングの止まり穴に内輪だけが残り、外側から爪を掛けられない場合は、内径側に食い込むコレット式の内掛けが必要です。ベアリングやギヤが面一で爪の入る隙間が全くない場合は、セパレーターを併用して外掛け式プーラーの爪が入るすき間を作る必要があります。

対象の形状と合わない種類を選ぶと、そもそも爪やコレットが掛からず作業自体が始められません。逆に、外側から爪を掛けられる対象にセパレーターを併用する必要はなく、外掛け式プーラー単体で足ります。

② 適合径(ベアリングの外径・内径)

プーラーの爪の開き幅やコレットの対応径が、対象の外径・内径の範囲に収まっている必要があります。軸受の呼び番号からも内径(d)を逆算できます。JISの慣用規則では内径番号「00」が内径10mm、「01」が12mm、「02」が15mm、「03」が17mm、「04」以降は番号×5mmという対応になり、NTN公式の転がり軸受総合カタログでも同じ並びが確認できます。これをプーラーの適合径表と照合すれば、範囲外かどうかを事前に判定できます。

対応径の範囲外の対象には爪やコレットがそもそも掛からず使えません。反対に、対応径の範囲が対象より大きく広すぎる機種を選ぶと、本体サイズ・質量が増えて取付の作業性が落ちます。対象の径に合った範囲の機種を選ぶことが前提です。

③ 必要な引抜き力(破断荷重/最大荷重)→手動ネジ式か油圧式か

圧入が固く、対象が大径であるほど必要な引抜き力(破断荷重)が大きくなります。手動ネジ式では、外掛け式のGL6で破断荷重60kN、GT型で50〜180kNまで展開されています。これを超える引抜き力が必要な、圧入が固く大径な対象には、油圧式のGLPシリーズ(最大荷重はGLP10・12で100kN、GLP15・18で140kN、GLP24で230kNとサイズごとに異なります)を検討します。

必要な引抜き力に対して破断荷重が不足する機種を使うと、ねじ山やボルトが対象より先に破断するおそれがあります。反対に、手動ネジ式で足りる範囲の対象に油圧式を使うと本体が重く(GLP15はセット質量27kg、GL6は2.3kg)、価格帯も上がるため過剰になります。最大荷重をトン換算すると140kNはおよそ14.3トンという目安になりますが、これはkNの数値から換算した参考値です。

抜去の前後に必要な工程も判定に含める

固着が疑われる場合は抜去前に浸透潤滑剤を軸受周辺へ吹き付けておくと、引き抜きに必要な力を抑えられる場合があります。また、抜去後に新しいベアリングを圧入で組み付けるなら、抜去用プーラーとは別に圧入用の打込み工具(ベアリングドライバー)が必要です。詳細は後述の専用アクセサリーの節で紹介します。

条件別、該当するベアリングプーラー

早見表とスペック解説を踏まえ、判定の流れ順(外掛け→内掛け→セパレーター併用→油圧式)で6点を紹介します。

スーパーツール ギヤープーラ(GL型) GL6

メナ

外掛けできる対象であれば、まずこの中型サイズが判定の基準になります。

軸に残った対象の背面に爪を掛けられる外形があり、ベアリングやプーリーの外径がおおよそ60〜150mm程度の場合に基本となる外掛け式プーラーです。スーパーツール公式のギヤープーラ(GL型)のスペック表ではGL6の被引き抜き物の直径はD:60〜150mm、爪の届く長さはH:190mm、破断荷重は60kN、質量は2.3kgとされています。フックボルト式のため対象の外径に合わせて爪の掛かる範囲を調整できます。

スーパーツール ギヤープーラ(GL型) GL6

ハウジングの止まり穴に内輪だけが残り外側から爪を掛けられない場合や、面一で隙間がない場合は、この機種では対応できません。


スーパーツール アマチュアベアリングプーラ AB2N

メナ

小径のベアリングに中型機を使うと取付自体がしにくいので、径に合わせて使い分けます。

電装品や自動車の小物整備で多い、外径24〜55mm程度の小径ベアリングを外掛けで抜く場合の機種です。スーパーツール公式のアマチュアベアリングプーラ製品ページでは、適用ベアリング外径24〜55mm、爪の届く長さ100mm、破断荷重8kN、質量0.7kgとされ、早締めノブ付きで素早く回転できると記載されています。電動工具・家電・自動車の小径ベアリング引抜き作業向けの位置づけです。

スーパーツール アマチュアベアリングプーラ AB2N(1枚目)

破断荷重8kNはGL6より小さく、大径対象には使えません。

スーパーツール アマチュアベアリングプーラ AB2N(2枚目)

KUKKO スライドハンマーセット KS-22-02

メナ

支えアームが使えない狭い場所での内掛け作業は、打撃式のこちらが候補になります。

内掛けで対象を掴んだあと、支えアーム式の力の掛け方ができない作業で使うスライドハンマー式のセットです。本体に内抜きエキストラクターなどを組み合わせて使用するタイプで、M6・M8X1・M10・M10X1・M12X1・M15X1.5(黒)とM7・M10・15-16G(メッキ)の汎用アダプターが付属します。

KUKKO スライドハンマーセット KS-22-02(1枚目)

スライドハンマー式は打撃で引き抜く方式のため、支えアームを掛けるスペースがあればGL型などのネジ式プーラーのほうが力を一定に掛けやすい場合があります。スペースに制約がある内掛け作業に絞って選ぶ機種です。

KUKKO スライドハンマーセット KS-22-02(2枚目)

スーパーツール ベアリングセパレータ BS-2

メナ

爪が入らないほど密着した対象には、プーラー単体ではなくこちらとの併用が前提になります。

ベアリングやギヤが軸・ハウジングに面一で密着し、爪の入る隙間が全くない場合に、外掛け式プーラーと併用するセパレーターです。BS-2はくわえられる径9〜115mm、適合プーラはGL6・PP2、破断荷重100kN、質量2.3kgとされています。両おねじのナットを交互に締め付けて対象の背後にすき間を作り、そこに外掛け式プーラーの爪を掛けて引き抜く、という2段階の使い方になります。

スーパーツール ベアリングセパレータ BS-2(1枚目)

単体では引き抜けず、適合するGL型などの外掛け式プーラーとの併用が前提です。

スーパーツール ベアリングセパレータ BS-2(2枚目)

(STRAIGHT/ストレート) パイロットベアリングプーラーセット 8~25mm 19-603

メナ

ブラインドホール内の内輪を抜くなら、まずこのコレット式が候補になります。

ハウジングの止まり穴に内輪だけが残り、外側から爪を掛けられない場合に使う内掛け式のセットです。商品説明では適合径8〜25mmとされ、本体チャックと8/10/12/15/17/20/25mm対応のコレット一式、プッシュボルト、ハンマー取付アダプターが同梱されます。外掛け用の爪ではなくコレットを内径側に押し広げて食い込ませる構造のため、隙間がない内輪を抜く用途に向いています。

(STRAIGHT/ストレート) パイロットベアリングプーラーセット 8~25mm 19-603(1枚目)

対応径は8〜25mmのため、これより大きい径の内輪や外掛け対象には別の機種を使います。支えアーム式が使えない場合は前述のスライドハンマー式との併用を検討してください。

(STRAIGHT/ストレート) パイロットベアリングプーラーセット 8~25mm 19-603(2枚目)

スーパーツール 2本爪油圧プーラセット GLP15

メナ

手動ネジ式で引き抜けないほど固着した大径の対象は、油圧式の最大荷重が判定基準になります。

圧入が固く大径(150〜375mm程度)の対象を手動ネジ式では引き抜きにくい場合に使う油圧式のセットです。スーパーツール公式の2本爪油圧プーラセット(GLPシリーズ)製品ページでは、GLP15の被引き抜き物の直径は150〜375mm、最大荷重は140kNとされています。トン換算するとおよそ14.3トン相当ですが、これはkNの数値から換算した参考値です。

スーパーツール 2本爪油圧プーラセット GLP15

セット質量は27kgとGL6(2.3kg)より大幅に重く、対象の径が150mm未満で手動ネジ式の破断荷重(GL6で60kN)で足りる場合は、油圧式を使う必要はありません。


抜去前後に使う専用アクセサリー

プーラー本体とは別に、抜去の前後で使う専用アクセサリーを2点紹介します。

(STRAIGHT/ストレート) ベアリングレースシールドライバー 19-8706

メナ

抜いたあとの組付けには、抜去用のプーラーとは別にこちらが必要です。

ベアリングを抜去したあと、新しいベアリングを圧入で組み付ける工程で使う打込み工具です。ステップ径違いの筒形アダプターとローレット柄のハンドルが付属し、対象の内径・外径に合うアダプターを選んで打ち込みます。

(STRAIGHT/ストレート) ベアリングレースシールドライバー 19-8706

プーラー自体には圧入機能はなく、組付けには別途この種のドライバーが必要です。組付けまで含めて作業するなら抜去前に揃えておくと手順が止まりません。


KURE(呉工業) 5-56 430ml 防錆・潤滑剤 1005

メナ

固着が疑われる場合は、プーラーを使う前にこちらで浸透させておくと作業がスムーズになります。

固着が疑われる場合、抜去作業の前に軸受周辺へ吹き付けておく浸透性の防錆・潤滑剤です。錆や汚れで固着した部分に浸透させておくことで、引き抜きに必要な力を抑えられる場合があります。

KURE(呉工業) 5-56 430ml 防錆・潤滑剤 1005(1枚目)

浸透潤滑剤だけでは固着が強い対象を引き抜くことはできないため、形状・適合径・必要な引抜き力に応じたプーラー本体の判定とあわせて使う併用品です。

KURE(呉工業) 5-56 430ml 防錆・潤滑剤 1005(2枚目)

買う前に確認しておきたいこと

プーラーを選ぶ前に、対象のベアリングの呼び番号から内径(d)を確認しておくと判定がしやすくなります(確認方法は前述のスペック解説②を参照)。また、引抜き力(破断荷重/最大荷重)は各機種の定格を超えるとボルトやねじ山が破断するおそれがあるため、必要な引抜き力の見込みより定格が大きい機種を選ぶことが前提です。

よくある質問

外掛け式と内掛け式、どちらを選べばいいですか?

軸に残った対象の背面に爪を掛けられる外形があれば外掛け式、ハウジングの止まり穴に内輪だけが残り外側から爪を掛けられない場合はコレット式の内掛けを選んでください。

爪の入る隙間が全くない場合はどうすればいいですか?

外掛け式プーラー単体では対応できません。セパレーターを背後にかませてすき間を作り、適合する外掛け式プーラーの爪を掛けて引き抜いてください。

手動ネジ式と油圧式、どちらを選べばいいですか?

必要な引抜き力(破断荷重)が手動ネジ式の定格内であれば手動ネジ式で足ります。圧入が固く大径で引き抜けない場合は、定格の大きい油圧式を検討してください。

適合径はどうやって確認すればいいですか?

対象のベアリングの呼び番号から内径を逆算し、各機種の適合径表と照合して確認してください。

まとめ

ベアリングプーラーを選ぶときは、まず外す対象の形状(外掛け可能か、ブラインドホールか、隙間ゼロか)を判定し、次に適合径、最後に必要な引抜き力(破断荷重/最大荷重)を確認して、外掛け・内掛け・セパレーター併用・油圧式のどれが条件に合うかを絞り込んでください。抜去前の浸透潤滑剤や抜去後の圧入組付け用工具まで含めて揃えておくと、作業の手順が途中で止まりません。

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