メナどうも、機械と電気の両方をこなすハイブリッドエンジニア、メナ(@menachite)です。「M20のケーブルグランドを買ったのに、太いケーブルが通らない」という相談、実務でも結構聞きます。先に言ってしまうと、M20は”ケーブルの太さ”ではなく”取付ねじの規格”です。今回はそこから、実際に何を確認すれば失敗しないかを順番に整理します。
ケーブルグランドの選び方の結論を先に言うと、①ケーブルの外径を測る→②筐体側の取付ねじ(またはねじ穴)のサイズを確認する→③その外径がクランプ範囲(対応径)に収まる製品を選ぶ→④必要なIP等級を決める→⑤使用環境に合う材質を選ぶ、という順番で進めれば迷いません。M20やM25はこのうち②(取付ねじ)の話であって、①(ケーブルの太さ)とは別物という点だけ最初に押さえておいてください。
ご自身の条件がどのあたりに当てはまるか、まずは下の早見表で大まかに確認してから本文を読み進めると理解が早いはずです。
| 状況 | ケーブル外径の目安 | 取付ねじ | 推奨IP等級 | クランプ範囲の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 屋内の制御盤・分電盤 | 8mm前後 | M20 | IP65〜67 | 6〜12mm対応品 |
| 屋外配線(雨がかかる) | 10mm前後 | M20 | IP67以上 | 6〜12mm程度対応品 |
| シールドケーブル | ケーブルによる | M20など既存に合わせる | IP67以上+EMC対応を検討 | 既存ケーブル外径に対応するもの |
「うちの場合は結局どれ?」を具体的な数字で知りたい方は、後半の「実際の選定例」の章に進んでもらってもかまいません。まずは基本から順番に見ていきます。
ケーブルグランドとは?
ケーブルグランドは、制御盤や機器の筐体にケーブルを引き込む部分に取り付ける部品です。役割は主に4つあります。①ケーブルを筐体にしっかり固定する(引っ張られてもケーブルや内部の端子に負担がかからないようにする、いわゆるストレインリリーフ)、②筐体の穴とケーブルの隙間を塞いで防塵・防水する、③必要に応じてケーブルのシールド(編組)を筐体に接地しEMC(電磁両立性)対策をする、④ケーブルの出入り口を物理的に保護する、の4点です。
ケーブルグランドの構造や性能に関する規格としてはIEC 62444(Cable glands for electrical installations)があり、この規格が対象とするケーブルグランドはIEC 60423で定められたメートルねじ(M16・M20・M25など)を取付ねじとして使うものが中心です。次の章で、このM20・M25が具体的に何を表しているかを見ていきます。
M20・M25は何のサイズ?
ケーブルグランドの型番や商品名によく出てくる「M20」「M25」は、筐体に取り付ける側のねじの規格(メートルねじ)を表しています。「M」はメートルねじであることを示し、続く数字はねじの呼び径(外径、単位mm)です。M20であればねじの外径が約20mm、ピッチ(ねじ山の間隔)は多くの製品で1.5mmが使われています。つまりM20は「20mmのケーブルが通る」という意味ではなく、「筐体側に切る、または開けるねじ穴が呼び径20mmの規格」という意味です。
このサイトでは工具のボルト径として「M20」が出てくる記事も別にあるため、本記事内で単に「M20」と書いた場合は常にケーブルグランドの取付ねじ規格(メートルねじ)としてのM20を指しています。
では実際に通せるケーブルの太さはどこで確認するのかというと、それが次に説明する「クランプ範囲」です。商品ページでは Cable Diameter / Clamping Range / Cable Range といった表記で案内されています。取付ねじがM20の製品でも、クランプ範囲は製品によって6〜12mm・7〜11mm・10〜14mmなどさまざまです。M20という表記だけで即決せず、必ずクランプ範囲の数値まで確認してください。
ケーブルグランド選びで最初に確認する5項目
実際に製品を選ぶ前に、次の5項目を順番に確認しておくと迷いません。
①ケーブルの外径
ノギスやメジャーで、使用するケーブルの一番太い部分(外側の被覆・シールドを含めた外径)を実測します。カタログ上の数値だけで判断せず、実際に使うケーブルを測ることが基本です。
②筐体側の取付サイズ
筐体側に取付ねじ規格(M20など)の穴が既に開いているか、これから開けるのかを確認します。あわせてパネルの板厚、ロックナットやシールワッシャーの要否、筐体内側にケーブルグランドの本体が収まるスペースがあるかも見ておきます。後付けの場合は「先にケーブルグランドを買う」のではなく「先に筐体側の穴条件(規格・板厚)を確認する」順番のほうが失敗しません。
③クランプ範囲
①で測った外径が、製品のクランプ範囲(対応ケーブル径)にちょうど収まるかを確認します。範囲の端ギリギリより、範囲の中央寄りに収まる製品のほうが締め代に余裕があり密封性が安定します。
④必要なIP等級
設置環境(屋内か屋外か、水がかかるか、粉塵が多いか)に応じて必要なIP等級を決めます。詳細は後述の章で解説します。
⑤材質・使用環境
屋内か屋外か、腐食性のガスや薬品が飛ぶ環境かどうかで、ナイロン・真鍮・ステンレスのどれが向くかが変わります。こちらも後述の章で解説します。
現場で起きやすい選定・施工ミス



実際に現場で経験した話です。大きめの穴のゴムブッシュに複数の線をまとめて通してしまい、その隙間から設備の油が垂れて内部に侵入してきたことがありました。こういう時は引き込み口を1つずつ見て、該当箇所を線の本数ぶんの対応径のブッシュに替えて1本ずつ通し直すのが直し方です。
ゴムブッシュやケーブルグランドのようなシール部品は、基本的に「1つの穴につきケーブル1本、それも対応クランプ範囲内の太さの単線を通す」ことを前提に密封する構造になっています。1本用の穴に無理やり複数本をまとめて通すと、ケーブル同士の隙間やケーブルとシール材の間に不規則な隙間ができてしまい、そこから水や油、粉塵が侵入します。
これはIP等級の数字が高ければ防げるという話ではありません。IP67やIP68といった等級は、あくまで規定の条件(規定の圧力・時間・きれいな水など)で試験をクリアしたことを示すものであり、その前提となる正しい施工(1穴1本・対応径内での使用)が崩れていれば、等級表示どおりの保護性能は発揮されません。「IP68だから何をしても大丈夫」ではなく「正しく取り付けてはじめてIP68」という理解が必要です。この点は後述のIP等級の章でもあらためて触れます。
メーカーが販売している多芯型(複数本まとめて通せるタイプ)のケーブルグランドやゴムブッシュも存在しますが、これらは内部のゴムシールが複数の穴・複数のケーブルに対応する専用構造になっており、通常の1本用の製品に複数本をまとめて押し込むのとはまったく別物です。複数本をまとめて引き込みたい場合は、最初から多芯対応(マルチホール)の製品を選ぶ必要があります。
実務での判断はシンプルです。線の本数ぶんケーブルグランド(またはゴムブッシュの穴)を用意する、1本ごとに対応径に合うものを選ぶ、まとめ通しはしない。この3点を守るだけで、今回のような油や水の侵入トラブルはかなり防げます。
ケーブル外径とクランプ範囲の合わせ方
商品ページの仕様欄には Cable Diameter / Clamping Range / Cable Rangeといった表記でケーブルの対応外径が記載されています。同じM20の取付ねじでも、製品によってクランプ範囲は6〜12mm・7〜11mm・10〜14mmなどまちまちです。①で実測したケーブル外径がこの範囲の中に、できれば端ではなく中央寄りに収まる製品を選んでください。
範囲の上限ギリギリのケーブルを無理に通すと十分に締め込めず密封性が落ち、逆に下限ギリギリの細いケーブルだと締め付けすぎてケーブル被覆を傷める恐れがあります。迷ったらワンサイズ上の製品ではなく、実測外径が範囲の中央に来る製品を選ぶのが基本です。
IP65・IP66・IP67・IP68の違い
IPコードはIEC 60529(国際規格)で定められた、筐体の保護等級を表す表記です。「IP」の後に続く2桁の数字のうち、1桁目(第一特性数字)が粉塵の侵入に対する保護等級(0〜6)、2桁目(第二特性数字)が水の侵入に対する保護等級(0〜9)を表します。ケーブルグランド単体だけでなく、筐体全体の防水・防塵性能を語るときにもこの表記が使われます。
| 等級 | 意味の目安 |
|---|---|
| IP65 | 粉塵の侵入なし(第一特性数字6)。あらゆる方向からの噴流水に耐える(第二特性数字5)。 |
| IP66 | 粉塵の侵入なし。強い噴流水(暴噴流)に耐える(第二特性数字6)。 |
| IP67 | 粉塵の侵入なし。規定の水深・時間で一時的に水没しても内部に影響がない(第二特性数字7)。 |
| IP68 | 粉塵の侵入なし。メーカーが規定する条件での継続的な水中浸漬に耐える(第二特性数字8)。 |
ここで重要なのは、IP68という表記があっても「どんな液体からも無条件に完全防水」という意味ではない点です。試験は基本的に清浄な水を使って規定の圧力・時間・水深の条件下で行われており、油や薬品への耐性、あるいは規定を超える水圧・水深での性能まで保証するものではありません。また前章のとおり、施工が正しく(1穴1本・対応クランプ範囲内で)行われていることが前提の数値でもあります。屋外や耐環境性が必要な場面では、等級の数字だけでなく製品ごとの仕様書(試験条件)まで確認するのが確実です。
ナイロン・真鍮・ステンレスの違い
ここではケーブルグランドの材質を徹底解説します。主にナイロン(樹脂)・真鍮(黄銅、多くはニッケルメッキ)・ステンレスの3系統があり、それぞれ得意な環境が異なります。単純に「どれが一番良い」とは言えません。
| 材質 | 特徴 | 向く環境 |
|---|---|---|
| ナイロン(PA66など) | 軽量・安価・電気絶縁性がある。耐熱温度はおおむね-40〜+100℃程度の製品が多い。 | 一般的な屋内制御盤・DIYのジャンクションボックスなど |
| 真鍮(多くはニッケルメッキ) | 金属ならではの強度・耐衝撃性。無垢のままだと酸化しやすいためニッケルメッキ処理されているものが多い。 | 工業用途全般。メッキ層の状態次第で耐食性が変わる点に注意 |
| ステンレス(SUS304/316など) | 耐食性・耐環境性に優れる。価格は高め。SUS316は塩害・薬品によりいっそう強い。 | 屋外・塩害地域・薬品が飛散する環境 |
注意したいのは、真鍮=表面のニッケルメッキが劣化・傷つくとそこから腐食が進むことがある点、ナイロン=製品によって耐熱温度や耐薬品性が異なる点です。「金属だから樹脂より必ず強い」「ステンレスなら何でも安心」といった単純化はできず、実際にはメッキの仕上げや樹脂のグレード、そして設置環境との相性で選ぶのが正しい考え方です。
屋内・屋外・制御盤では何を選ぶ?
| 環境 | 目安のIP等級 | 材質の目安 |
|---|---|---|
| 屋内の制御盤・分電盤(水がかからない) | IP65〜67 | ナイロンで十分なことが多い |
| 屋外(雨がかかる、直射日光あり) | IP67以上 | ステンレスまたは真鍮(メッキ良好なもの) |
| 塩害地域・薬品飛散環境 | IP67以上 | ステンレス(SUS316まで検討) |
屋内の制御盤で水がかかる心配がほとんどない場所であれば、コストと軽さのバランスが良いナイロンで十分なケースが大半です。屋外や雨がかかる環境ではIP67以上を目安にしつつ、紫外線劣化や衝撃を考慮して金属製(ステンレスや状態の良い真鍮)を検討する、という順番で考えると整理しやすくなります。
シールドケーブルならEMC対応が必要?
シールド(編組)付きのケーブルを使う場合、通常のケーブルグランドとEMC対応のケーブルグランドでは役割が異なります。通常品はケーブルの固定と防水・防塵が主な役割ですが、EMC対応品はケーブルのシールド層に内部の接点(スプリングやリング状の接点)を直接接触させ、筐体を通じて接地することでシールドの連続性を確保し、電磁ノイズの侵入・放射を抑える役割を持ちます。ケーブルグランドの構造・性能規格であるIEC 62444でもこうしたシールド対応の構造が扱われています。
注意したいのは「シールドケーブルだから必ずEMC対応グランドが必須」と一律には言えない点です。必要かどうかは、装置全体の接地設計やシールド処理の方針(どこでシールドを筐体に落とすか)によって変わります。すでに別の箇所でシールドを適切に接地している設計であれば、引き込み部は通常のケーブルグランドで防水・固定だけを担わせる設計も普通にあります。判断に迷う場合は、装置の設計者や機器メーカーの仕様書に沿って決めるのが確実です。
なおEMC対応のケーブルグランドは業務用の配線資材として扱われることが多く、本記事の執筆時点(2026年9月)ではAmazonで在庫が確認できる一般向け商品を見つけられませんでした。実務では制御盤の部材調達でよく使われるMISUMIのような専門商社で型番検索してみるのが現実的です。たとえば型番EMC-MBA20M-11(日本AVC製、M20×1.5・適合ケーブル外径7〜11mm・IP68/5気圧、メーカー公式ip68.jpで仕様確認済み)のような製品名を手がかりに探してみてください(本記事のアフィリエイト経路には含まれない、調達先の探し方としての参考情報です)。
実際の選定例
ここまでの流れを、具体的な数字を使って3パターン確認してみます。
屋内制御盤の例(外径8mm・取付M20・屋内・耐環境性は不要)
ケーブル外径8mm、筐体側は取付ねじM20、設置場所は水のかからない屋内の制御盤とします。この場合、クランプ範囲が6〜12mm程度でM20対応の製品を選べば外径8mmは範囲の中央あたりに収まります。水がかかる心配がないのでIP等級はIP65〜67クラスで十分、材質もコストと軽さを優先してナイロンで問題ありません。
屋外配線の例(外径10mm・取付M20・雨がかかる・防塵防水が必要)
ケーブル外径10mm、取付M20、設置場所は雨がかかる屋外とします。この場合はまずIP等級をIP67以上に設定し、クランプ範囲が6〜11mmまたは10〜14mm程度でM20対応の製品の中から、外径10mmが範囲の中央寄りに収まるものを選びます。材質は紫外線劣化や衝撃、経年でのメッキ劣化を考慮してステンレス製を優先的に検討する、という順番になります。
シールドケーブルの例
シールド付きケーブルの場合は、まず①ケーブルの外径(シールド層を含めた実測値)と②筐体側の取付サイズを通常どおり確認したうえで、③装置全体の接地・シールド処理の設計を踏まえてEMC対応品が必要かを判断します。EMC対応が必要な設計であれば、対応するクランプ範囲と取付ねじ規格が一致する製品を、メーカー資料を確認しながら選定します。
おすすめのケーブルグランド
ここまでの選び方を踏まえたうえで、実際にAmazonで在庫と実在を確認できたケーブルグランドを、材質(ナイロン・ステンレス・真鍮)と構造タイプ(標準型・マルチホール型)の2軸で紹介します。まずは構造タイプの選び分けを早見表で確認してください。
| 構造タイプ | いつ選ぶか | いつ選ばない方がいいか |
|---|---|---|
| 標準型(単芯用) | 1つの穴に1本の単線を通す、最も一般的なケース | – |
| マルチホール型 | 細い制御線・信号線など複数本を1箇所からまとめて引き込みたいとき(前述の油侵入エピソードの「正しい」やり方) | 太い動力線1本だけの場合や、ホール数・対応径が実際のケーブル本数・太さと合わない場合 |
| セパレート型(分割型) | コネクタ付き・端末処理済みのケーブルを、切らずに後から通したいとき | 未加工の電線をそのまま通すだけなら標準型で十分 |
| EMC型 | シールド(編組)を筐体に接地してノイズ対策をしたいとき | 装置全体で別途シールド処理・接地をしている設計の場合は不要なことがある |
| 通気(ブリーザー)型 | 温度変化で筐体内外に気圧差が生じ、結露やハウジング変形を防ぎたいとき | 単純な防水・固定だけが目的なら標準型で十分 |
まずは標準型の中から、材質(ナイロン・ステンレス・真鍮)と、同じナイロンでもサイズ違い(M20・M25)を実在商品で見ていきます。
Rierdge M20ケーブルグランド(ナイロンPA66・IP68・2個)





価格も手頃で、屋内の制御盤やDIYの分電盤まわりならまずこれで十分な組み合わせです。締め込みは手締め+軽くレンチで増し締め程度でOKです。
Rierdgeのこのケーブルグランドは材質がナイロンPA66と明記されている数少ないM20サイズの実在商品です。適合ケーブル外径は7〜11mmで、屋内制御盤で使う細径の制御線・電源線であればこの範囲に収まるケースが多くなります。


IP68表記ですが、前述のとおりIP等級はあくまで規格上の試験条件をクリアしたという意味です。屋内制御盤のように水がかかる環境でなければIP65〜67クラスでも実用上は十分なことが多く、逆に屋外で使う場合は取付穴のシールワッシャーの有無や増し締めもあわせて確認してください。


uxcell M25ケーブルグランド(プラスチック製・防水・2個)
同じナイロンでも、M20より一回り大きいM25サイズです。太めのケーブルや複数芯をまとめた分電系のケーブルで、M20のクランプ範囲では収まらない場合はこちらのサイズを検討してください。


適合ケーブル外径は9〜16mmとM20より太径寄りで、材質・防水設計はメーカー表記どおりのプラスチック(ナイロン系)製です。取付ねじ規格が同じM系列でも、M20とM25では対応できるケーブルの太さが変わる点の実例として見てください。筐体側の取付穴もM25用に合わせて開ける必要があります。


メタルケーブルグランド SS201208(ステンレスSUS304・IP68)





屋外・塩害・薬品が飛ぶような環境ではナイロンより先にこちらを検討したいステンレス品です。価格は上がりますが耐食性がまったく違います。
こちらはロックナット・本体・シールナットがSUS304ステンレス製と明記されたM20×1.5のケーブルグランドです。屋外で雨がかかる場所や、塩害・薬品飛散が想定される環境では、ナイロンや通常の真鍮(ニッケルメッキ)よりも耐食性の面で有利になります。


Oリング・シールにはNBR(ニトリルゴム)が使われており、耐油性がある点も実務では地味に効いてきます。適合ケーブル外径は6〜11mmなので、外径10mm前後の屋外用ケーブルであれば範囲内に収まる計算です。


日本AVC メタルケーブルグランド MBA20M-08(真鍮ニッケル鍍金・IP68)



真鍮ニッケル鍍金は金属ならではの強度があります。ただしメッキ層が傷つくとそこから腐食が進むことがあるので、塩害地域はステンレスのほうが安心です。
この製品はAmazon上の表記は「金属製」のみでしたが、メーカー(日本AVC)公式の製品ページで材質が真鍮・ニッケル鍍金であることを確認したうえで掲載しています。取付ねじはM20×1.5、適合ケーブル外径は5〜8.8mmとやや細径寄りのため、屋内制御盤の細めの制御線などに向いています。


真鍮ニッケル鍍金は金属らしい強度と耐衝撃性を持ちますが、無垢の真鍮のままではなくニッケルメッキで保護されている点がポイントです。メッキ層に傷がつくとそこから腐食が進むことがあるため、屋外や塩害環境ではステンレス製(前述のSS201208など)のほうが安心です。


マルチホール型:複数本を1箇所からまとめて引き込みたいとき
ここまでの3点は「1つの穴に1本」の標準型でした。もし細い制御線や信号線を複数本、1箇所からまとめて引き込みたい場合は、最初から複数の独立した穴を持つマルチホール型を選んでください。前述の油侵入エピソードのとおり、標準型の1本用の穴に無理やり複数本をまとめて通すのが失敗パターンです。



この製品は独立した3つの穴それぞれに1本ずつケーブルを通す構造で、1つの穴に複数本をまとめて押し込む使い方とはまったく別物です。メーカー表記のIP68・対応ケーブル径(1穴あたり2.6mm)の範囲内で使う前提です。


M12サイズで3つの穴を持ち、ロックナット・ワッシャー付きで、3つの独立した穴それぞれに1本ずつ約2.6mm径のケーブルを通して密封する構造です。センサー線や信号線など細いケーブルを複数本まとめて筐体に引き込みたい場面向けで、太い動力線1本だけを通す用途には向きません。ホール数や対応径が実際に通したい本数・太さと合わない場合は、この製品ではなく条件に合う多芯対応品を別途探してください。


セパレート型(分割型):端末処理済みケーブルを切らずに通したいとき
セパレート型(分割型・割り型)は、本体が2つ以上のパーツに分割できる構造のケーブルグランドです。コネクタや端子が既に取り付けられた、あるいはモールド加工済みのケーブルは、通常のケーブルグランド(穴に一本の状態で通す構造)ではコネクタが邪魔で後から通すことができません。こうした場合でも、ケーブルを切ったりコネクタを外したりせずに済むのがセパレート型を選ぶ理由です。ただし本記事の執筆時点でAmazon.co.jpに在庫状況が安定した適合品を見つけられなかったため、無理に商品カードは置きません。実務で探す場合は、産業用コネクタ・電材を扱う専門商社(MISUMIなど)で「分割ケーブルグランド」「セパレートタイプ」として型番検索するのが現実的です(本記事のアフィリエイト経路には含まれない、調達先の探し方としての参考情報です)。
EMC型・通気(ブリーザー)型:特殊用途は編集参照で正直に
EMC対応品は前述の章で解説したとおり、シールドケーブルの編組を筐体に接地しノイズ対策をする特殊用途向けで、装置全体の接地設計次第では不要になることもあります。通気(ブリーザー)型は、屋外設置などで筐体内外の温度変化により気圧差が生じる場合に、水は通さず空気だけを通して結露やハウジングの変形を防ぐための特殊タイプです。単純な防水・固定だけが目的であれば標準型で十分で、どちらも必要になる場面は限定的です。いずれも本記事の執筆時点でAmazon.co.jpに在庫あり・実在確認済みの適合品を見つけられなかったため、無理に商品カードは置かず見送りました。実務で必要になった場合は、EMC型は前述のとおりMISUMI等の専門商社で型番検索を、通気型も同様に産業用電材を扱う専門商社で探すのが現実的です。
ケーブルグランドと合わせて用意したいアクセサリー
本体以外に、選定・施工の場面でこの2つがあると作業がスムーズになります。特定の型番をおすすめするというより、用途の説明として紹介します。
ケーブル外径を測るノギス


前述の「①ケーブルの外径」で使う道具です。メジャーでもおおよその見当はつきますが、クランプ範囲ギリギリの製品を選ぶ場合はノギスで0.1mm単位まで測っておくと選定ミスを防げます。


測定範囲0〜150mm・最小読取(目量)0.05mmのアナログノギスで、電池切れの心配がなくケーブルの外径をすぐに実測できます。ノギス自体の仕組みや選び方をもう少し詳しく知りたい方は「ノギスの選び方」もあわせてご覧ください。


交換用のシールワッシャー・パッキン
屋外設置のケーブルグランドは、本体よりも先にゴム製のシールワッシャーやパッキンが経年劣化することがあります。多くの製品はメーカーから補修用のワッシャー単体が供給されているため、屋外の重要な設備では予備を確保しておくと交換対応が早くなります。
ケーブルグランドを選ぶときの注意点
最後に、購入後の取り付けで見落としがちなポイントをまとめます。
・締め付けはメーカー推奨のトルクを目安に、手締め後に軽く増し締めする程度で十分です。締めすぎるとケーブル被覆やゴムシールを傷める原因になります。
・パネル厚とねじの長さが合っているか確認してください。パネルが厚すぎるとねじが最後まで届かず、薄すぎるとロックナットが十分に効かないことがあります。
・シールワッシャーやロックナットが必要な仕様かどうかは製品ごとに異なります。付属品の有無を購入前に確認してください。
・ゴムパッキン部分は経年で硬化・劣化します。屋外設置のものは定期的な目視点検をおすすめします。
・そして本記事で紹介した実例のとおり、1つの穴には1本のケーブルを対応クランプ範囲内で通すのが大原則です。複数本をまとめて通したい場合は、最初から多芯対応(マルチホール)の製品を選んでください。



ここまで読んでいただければ、ご自身のケーブル外径・筐体側のねじ規格・設置環境から、必要なクランプ範囲とIP等級、材質までご自身で判断できるはずです。あとは実際に条件に合う製品を探すだけです。
まとめ
ケーブルグランド選びの流れは、①ケーブルの外径を実測する→②筐体側の取付ねじ規格(M20など)を確認する→③外径がクランプ範囲に収まる製品を選ぶ→④設置環境から必要なIP等級を決める→⑤環境に合う材質(ナイロン・真鍮・ステンレス)を選ぶ、の5ステップです。M20・M25はあくまで取付ねじの規格であり、ケーブルの太さそのものではありません。
そしてIP等級は「数字が高ければ何でも防げる」ものではなく、正しい施工(1つの穴に1本、対応クランプ範囲内で使う)があってはじめて成立する保護性能です。この記事の冒頭で紹介した早見表と合わせて、購入前の最終チェックに使ってみてください。


