メナどうも、機械と電気の両方をこなすハイブリッドエンジニア、メナ(@menachite)です。今回は放射温度計(非接触温度計)比較です。工業設備の点検用と食品の温度管理用では、放射率の設定方式や距離比がまったく違うので、用途別に厳選しました。
放射温度計は、対象物が発する赤外線から表面温度を非接触で読み取る計器です。ただし「放射率」の設定を対象物に合わせないと実際の温度とズレが出るため、対象物ごとの放射率をどう選べるか(細かく可変か、プリセット選択式か)が機種選びの重要なポイントになります。また距離比(D:S)が小さい機種は近距離専用、大きい機種は離れた場所からのスポット測定に向くという違いもあります。
結論から言うと、工業設備の点検にとりあえず1台なら距離比12:1のHIOKI FT3700、表面と芯温の両方を測りたいならA&D AD-5612A、食品の温度管理に絞るなら佐藤計量器SK-8920、価格を抑えてコンパクトに持ちたいならシンワ測定73015がおすすめです。理由は後述しますが、放射率の設定方式と距離比から選ぶことが重要です。
この記事では測定範囲・距離比・放射率設定方式・価格の4軸で4製品を比較し、全てメーカー公式仕様で裏取りした上で、正直にお伝えします。
結論:目的別おすすめ早見表
先に結論です。「工業設備の点検を素早くこなしたい」ならHIOKI FT3700、「表面と芯温の両方を管理したい」ならA&D AD-5612A、「食材ごとの放射率設定に迷いたくない」なら佐藤計量器SK-8920、「価格を抑えてまず1台試したい」ならシンワ測定73015を選べば間違いありません。測定範囲・距離比の数値は全て2026年8月11日時点でメーカー公式仕様を確認済みですが、購入前に商品ページで最新仕様をご確認ください。
| 製品 | 測定範囲 | 距離比 | 価格(目安) | こんな人におすすめ |
|---|---|---|---|---|
| HIOKI FT3700 | -60〜550℃ | 12:1 | ¥17,600(税込) | 工業設備の点検を素早くこなしたい人 |
| A&D AD-5612A | -33〜220℃(赤外)/-55〜330℃(中心温度) | 1:1 | ¥6,500(税抜) | 表面と芯温の両方を管理したい人 |
| 佐藤計量器 SK-8920 | -40〜250℃ | 約10:1 | ¥13,750(税込) | 食材ごとの放射率設定に迷いたくない人 |
| シンワ測定 73015 | -55〜250℃ | 5:1 | ¥6,600(税抜) | 価格を抑えてまず1台試したい人 |
放射温度計おすすめ4選
HIOKI FT3700





業務でとりあえず1台、失敗しない精度の高いものを選ぶなら僕はHIOKI FT3700を勧めます。距離比12:1でトリガーを引くだけのワンタッチ測定、分電盤の点検から配管の温度チェックまで一通りこなせます。
HIOKI FT3700は、-60.0〜550.0℃の測定範囲に対応したガンタイプの放射温度計です。公式仕様(2026年8月11日確認、https://www.hioki.co.jp/jp/products/detail/?product_key=304)によると、距離比は12:1(1m離れた位置で直径83mmの円内平均温度を測定)、精度は0℃以上で±2.5℃または±2.5%rdgの大きい方、放射率は0.95/0.70/0.30の3点から選択する方式で、応答時間は約1秒です。


正直に言うと、FT3700は放射率をピンポイントで細かく(0.01刻みで)調整するタイプではなく、3段階のプリセットから選ぶ簡易方式です。食材ごとに放射率を細かく追い込みたい方は後述のSK-8920のような食品専用機のほうが向いています。
分電盤や配管、モーターなど工業設備の温度点検を素早くこなしたい方、HIOKIブランドの信頼性を求める方に向いています。


A&D AD-5612A





非接触だけじゃなく実際に刺して芯温まで測りたいときは、僕はAD-5612Aを使います。焼き物や揚げ物の芯温チェックにセンサーを差し込めるので、表面と中心の両方を1台で確認できるのが便利です。
A&D AD-5612Aは、非接触の赤外線測定(-33〜+220℃)とプローブを直接刺して測る中心温度センサー(-55〜+330℃)の2種類の測定方式を1台に備えた放射温度計です。公式仕様(2026年8月11日確認、https://www.aandd.co.jp/products/electronic/hygrothermograph/thermometer/ad5612a/)によると、赤外線側の精度は±2%または±2℃の大きい方、中心温度センサー側は±1%または±0.8℃の大きい方、放射率は0.10〜1.00まで0.01刻みで細かく設定できます。


ここは正直に書きますが、距離比は1:1(最小測定エリアφ10mm)とかなり近距離向けの設計です。離れた場所から素早くスポット測定したい用途には、前述のFT3700のような距離比12:1の機種のほうが向いています。
調理現場での食材温度管理や、給食施設での中心温度記録など、表面と芯温の両方を1台で管理したい方に向いています。


佐藤計量器 SK-8920





食品の温度管理に絞るなら、僕はSK-8920を選びます。食材ごとの放射率がアイコンで表示されるので、肉・魚・パン等で放射率を毎回調べ直す手間がないのが助かります。
佐藤計量器製作所SK-8920は、-40〜250℃の測定範囲に対応した食品用放射温度計です。公式仕様(2026年8月11日確認、https://shop.sksato.co.jp/8264-00)によると、精度は-40.0〜-20.0℃で±3℃、-19.9〜250℃で±2%rdgまたは±2℃の大きい方、放射率は0.98/0.92/0.85の3点から食材アイコンを見て選ぶ方式、距離比は約10:1です。レーザーマーカーで測定位置を確認できます。


正直なところ、SK-8920は工業設備の高温測定(500℃超)には対応していません。工場設備やダクトの高温部を測りたい場合は前述のFT3700のような550℃対応機を選ぶ必要があります。
飲食店や給食施設で食材の温度管理を日常的に行う方、食材ごとの放射率設定に迷いたくない方に向いています。


シンワ測定 73015





とりあえず1台、価格を抑えてコンパクトに持ち歩きたいなら僕はシンワ測定73015を勧めます。時計・室内温度表示も付いていて、道具箱に転がしておくのにちょうどいいサイズ感です。
シンワ測定73015(放射温度計 A-2ミニ)は、-55〜250℃の測定範囲に対応したコンパクトな放射温度計です。公式仕様(2026年8月11日確認、https://www.shinwasokutei.co.jp/products/73015/)によると、距離比は5:1、精度は0℃以上で±2%または±2℃の大きい方、放射率は0.05〜1(工場出荷時0.95)まで調整可能、室内温度表示(-10〜50℃)と時計機能も搭載しています。


正直に言うと、73015は距離比5:1・重量30gという携帯性重視の設計のため、遠距離からの高精度スポット測定にはあまり向きません。工業用途で精密な測定を求める場合は前述のFT3700やAD-5612Aを検討したほうが確実です。
価格を抑えてまず1台試してみたい方、DIYや家庭での簡易的な温度チェックに使いたい方に向いています。


放射温度計専用アクセサリー|あると便利な関連計測器
放射温度計だけでなく、用途に応じて併用したい関連計測器を2つ紹介します。本記事のモデルを問わず、目的に合わせて使い分けると測定の精度や効率が上がります。
サーモグラフィ(赤外線カメラ)
本記事の放射温度計はいずれも「1点(スポット)」の表面温度を数値で読み取る計器です。これに対し、対象物の表面全体を色分けして可視化するサーモグラフィ(赤外線カメラ)は測定原理が異なる別カテゴリの機器で、断熱不良や漏水箇所の面的な把握に向いています。面で熱漏れを可視化したい場合は、後述の関連記事もあわせてご覧ください。
電気計測器・検査機器セット
放射温度計単体ではなく、検電器やクランプメーターなど電気設備点検一式を揃えたい場合は、後述の電気計測器・検査機器の比較記事もあわせてご覧ください。
選び方・注意点
放射温度計を選ぶ際にまず確認すべきは、対象物の放射率をどう設定できるかです。金属光沢面など放射率が低い対象物は、プリセット選択式(3段階程度)の機種だと実際の温度とズレが出やすく、0.01刻みで細かく調整できる機種のほうが精度を追い込みやすくなります。
距離比(D:S)にも注意が必要です。数値が大きいほど離れた場所から小さな対象物を測定でき、数値が小さい機種は近距離専用です。高所や危険な場所を離れて測定したい場合は距離比の大きい機種を選ぶ必要があります。
また、いずれの製品もメーカーが明記する通り体温計としての使用はできません。工業用・調理用の温度計として、用途に合った製品を選んでください。本記事で掲載した測定範囲・精度・距離比の数値は、2026年8月11日時点でHIOKI(hioki.co.jp)・A&D(aandd.co.jp)・佐藤計量器製作所(sksato.co.jp)・シンワ測定(shinwasokutei.co.jp)の各公式製品ページで確認したものです。購入・使用前には必ずメーカー公式の取扱説明書・仕様書で最新情報をご確認ください。



放射温度計は「放射率をどう設定できるか」と「どのくらい離れた場所を測りたいか」で選ぶモデルが変わります。用途を先に決めてから比較すると、シンプルに選べますよ。
まとめ
放射温度計4製品を、測定範囲・距離比・放射率設定方式・価格の4軸で比較しました。工業設備の点検ならHIOKI FT3700、表面と芯温の両方を測りたいならAD-5612A、食品の温度管理ならSK-8920、価格重視ならシンワ測定73015が候補になります。
計測器をさらに揃えたい方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。