「2021年の法改正で電動ファン付きが必要になったと聞いたが、その作業がどちらに当てはまるのか分からない」「今使っている防じんマスク(DS2)のままで足りるのか」「PL1・PL2・PL3の違いが分からないまま選んでいいのか」――屋内で金属アーク溶接に従事している人が、電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)を検索する動機はこの3つに集約されます。
この記事では、屋内継続作業か屋外・非継続作業かという法令上の分岐、防護係数(指定防護係数)の読み方、面体形式の違いという3つの軸に沿って、実在・購入可能を確認できた4メーカー7点(交換フィルタ2点を含む)を紹介します。数値・規格は一次資料からの逐語引用に基づき、効果の断定や医学的な助言は行いません。最終的な法令適合の判断は、事業者による作業環境測定の結果に基づいて行ってください。
屋内継続作業か、屋外・非継続作業かでまず分かれる
厚生労働省の公表資料には「これら改正政省令は、令和3年4月1日から施行・適用されます。」と記載されています(厚生労働省公式ページ、2026-09-22確認)。この改正で焦点になるのが、金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場での取り扱いです。
重松製作所公式の解説ページでは、屋内・継続作業について「金属アーク溶接等作業を継続して行う屋内作業場で、新たな作業方法採用時に個人サンプリングによる空気中の溶接ヒューム濃度の測定を義務付け」、その測定結果から「要求防護係数」を求め、それを上回る指定防護係数を持つ呼吸用保護具を選ぶ、という趣旨が説明されています(2026-09-22確認)。一方、屋外・非継続作業については「粒子捕集効率が95%以上のろ過材を有する防じんマスク又は防じん機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具」を選択する、という趣旨の記載になっています。
つまり、屋内で継続的に溶接する現場は個人サンプリング測定+要求防護係数に見合う指定防護係数のPAPRを選ぶ必要がある一方、屋外・非継続の現場であれば粒子捕集効率95%以上のフィルタで足りる余地がある、という二分構造です。測定の具体的な方法・頻度はこの記事の範囲外のため、事業所の作業環境測定の担当者・専門機関に確認してください。
メナ指定防護係数の数字(14〜300)は大きいほど偉いわけではありません。測定した要求防護係数を上回っているかどうかで選ぶのが本来の考え方です。
JIS T8157とPL/PS区分の読み方
電動ファン付き呼吸用保護具はJIS T8157で規定されています。同規格には「この規格は,事業場その他の場所において,空気中に浮遊する粒子状物質(以下,粉じんなどという。)を吸入することによって,人体に有害な影響を及ぼすおそれがある環境で用いるろ過式の電動ファン付き呼吸用保護具(以下,PAPRという。)について規定する。」と定義されています(日本規格協会公式プレビュー、2026-09-22確認、原文そのまま)。あわせて「警告1 酸素欠乏環境では使用できない。」「警告2 有毒なガス又は蒸気若しくは揮発性のミストが存在する場所では使用できない。」「警告4 粉じんなどの種類及び濃度に適したPAPRを選択する必要がある。」という警告も明記されています(原文そのまま)。
防じん機能の等級は、重松製作所公式ページによると「防じん機能は、区分PL3、PL2、PL1及びPS3、PS2、PS1に分類」されます(2026-09-22確認)。PL1〜PL3・PS1〜PS3それぞれの粒子捕集効率の数値そのものはJIS本文の有償頒布範囲にあり本記事では確認できていないため、以下の商品紹介では各メーカーの公式・販売ページに記載された製品ごとのスペック値のみを引用しています。
なお、PL1〜PL3が「全て99.97%以上」とする要約情報もウェブ上に存在しますが、これは複数の製品個別ページの実測値(PL1=95.0%系統の製品が複数確認できる)と食い違うため、本記事ではその要約を採用せず、製品ごとの公式スペック値のみを一次情報として扱っています。マンガン管理濃度の数値も原文の逐語確認は本記事の範囲では未実施のため、参考情報にとどめています。
4メーカー比較表
面体形式・防じん区分・指定防護係数・価格帯を1つの表にまとめました。指定防護係数の大小はモデルの優劣ではなく、屋内継続作業で測定した要求防護係数に対して選ぶべき値が変わる、という前提で見てください。
| メーカー | モデル | 面体形式 | 防じん区分 | 指定防護係数 | 価格帯 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3M | アドフロー577700J | 面体形(溶接シールド一体) | 未計測(公式ページ未確認) | 未計測 | 約28万円 |
| 重松製作所 | Sy185-H(M)+V3フィルタ | 面体形(全面形) | PL3(V3フィルタ) | 未計測 | 約4万円(本体)+1,200円(フィルタ) |
| 興研 | BL-1005-02 | 面体形(半面形) | PL1(95.0%、無印BL-1005のスペックから推定) | 14 | 約29,000円 |
| 興研 | BL-100H-05 | 面体形(半面形、大風量形) | PL3 | 300 | 約4万円 |
| 山本光学(スワン) | LS-355;H1SNM+NMF-500K | ルーズフィット形(ヘルメット+フェイスシールド) | PL1(95.0%以上、実測98.8%) | 11 | 約75,000円+2,200円(フィルタ) |
3Mのアドフロー577700Jは溶接用自動遮光面(スピードグラス9100MP)と電動ファンユニットが最初から一体になっている点が他社にない特徴ですが、防護係数・防じん区分は公式ページで逐語確認できておらず「未計測」としています。導入を検討する場合は、事業者側でメーカーに直接仕様を確認してください。
要求防護係数と面体形式から選ぶ7点
屋外・非継続作業や要求防護係数が低い現場向けのエントリーモデルから、屋内継続作業で要求防護係数が高い場合の高防護モデル、本体とフィルタを自由に組み合わせるタイプ、落下物リスクがある現場向けのヘルメット一体型、そして溶接シールドまで一体になった完成度重視のモデルまで、選び方の軸に沿って並べています。
興研 サカヰ式 電動ファン付き呼吸用保護具 BL-1005-02(電池・充電器付)
Yahoo!ショッピングの商品名には「興研 BL-1005-02 電池・充電器付き 電動ファン付き呼吸用保護具 溶接ヒューム濃度防護係数14 サカヰ式」と記載されています(2026-09-22確認、原文そのまま)。防じん区分はPL1・粒子捕集効率95.0%・漏れ率A等(同シリーズBL-1005無印のスペックページで確認、-02は電池・充電器付きの派生型で、ろ過材の性能区分自体は無印と同一と推定した値です)。


屋外・非継続作業、または屋内継続作業でも測定した要求防護係数が14以下に収まる現場向けのエントリー機です。半面形・通常風量形のため装着感は軽めですが、要求防護係数がこれを超える現場では次のBL-100H-05のような高防護モデルを検討する必要があります。



指定防護係数14という数字は商品名にそのまま明記されています。要求防護係数を測定したうえで、この数字を上回っているかどうかをまず確認してください。
興研 サカヰ式 電動ファン付き呼吸用保護具 BL-100H-05(電池・充電器付)
楽天市場の商品画像内には「興研 PL3/S級 指定防護係数300 BL-100H-05 電池・充電器付」という表示が確認できます(2026-09-22、画像目視確認)。半面形・大風量形で、PL3・S級という上位の防じん区分に対応します。


屋内継続作業で個人サンプリング測定を行った結果、要求防護係数が高いと判定された現場向けの選択肢です。BL-1005-02(防護係数14)と対比すると分かる通り、防護係数は用途によって必要な水準が大きく異なります。デメリットは大風量形のぶん本体がやや重く感じられる可能性がある点で、長時間装着する場合はフィット感を事前に確認することをおすすめします。
重松製作所 電動ファン付き呼吸用保護具 Sy185-H(M)(フィルタ・吸収缶別売)


全面形・直結式の本体で、フィルタ・吸収缶は別売りです(商品画像内の注記文言で確認、2026-09-22)。本体と交換部材を自由に組み合わせたい人向けのモデルで、溶接ヒューム(粉じん)のみが対象で有機溶剤蒸気の同時発生がない現場では、次に紹介するV3フィルタ(防じん専用、PL3クラス)を組み合わせます。塗装同時作業など有機ガスも発生する現場では、V3/OV(有機ガス吸収缶付き、JIS T 8154:2018準拠)を選ぶ必要がある点に注意してください。


デメリットは本体だけでは使用できず、フィルタ・吸収缶を別途購入する手間がかかる点です。ただしその分、現場の状況(粉じんのみか有機ガスも発生するか)に応じてろ過材を選び分けられる自由度があります。





粉じんだけの現場でV3/OV(吸収缶付き)を選んでも使えますが、塗装同時作業がないなら防じん専用のV3で十分です。現場の状況に合わせてフィルタを選んでください。
専用アクセサリー:交換フィルタ(Sy185-H(M)用)
重松製作所 電動ファン付き呼吸用保護具用 交換フィルタ V3(20355) V3F


重松製作所公式ページでPL3クラスの防じん専用フィルタと確認できます(2026-09-22確認)。Sy185-H(M)本体用のフィルタで、有機ガスの吸収機能はありません。塗装同時作業などで有機ガスも発生する現場では、このV3ではなくV3/OV(吸収缶付き)を選んでください。


ヘルメット一体型・溶接シールド一体型モデル
山本光学 スワン ライフセーバー LS-355;H1SNM(飛来落下物用ヘルメット仕様)
ルーズフィット形(ヘルメット+フェイスシールド)で、飛来落下物用のH1SNM仕様です。公式スペック(WebSearchで確認、2026-09-22)では、粒子捕集効率が「社内基準値95.0%(PL1)以上、測定値(平均)98.8%」、指定防護係数11、対応フィルターはNMF-500Kとされています。


頭上からの落下物リスクがある屋内溶接現場(足場上作業など)に適する位置づけのモデルです。デメリットはヘルメット一体構造のぶん本体価格が7万円台とやや高めな点と、指定防護係数が11と他モデルに比べ低めな点で、要求防護係数がこれを超える現場では別のモデルを検討する必要があります。なお墜落時保護用のH1SNZという別型式もありますが、本記事ではH1SNMのみを紹介しています。
専用アクセサリー:交換フィルタ(LS-355;H1SNM用)
山本光学 電動ファン付き呼吸用保護具用 交換フィルタ NMF-500K


LS-355;H1SNMの対応フィルターとして山本光学公式スペックに記載されている交換用メカニカルフィルタです(2026-09-22確認)。送風量は約140〜175L/min(NMF-500Kフィルター使用時)とされています。摩耗・目詰まりに応じて定期的な交換が必要です。


3M アドフロー 電動ファン付き呼吸用保護具(スピードグラス溶接シールド9100MP付き)577700J
溶接用の自動遮光面(スピードグラス9100MP)と電動ファンユニット(アドフロー)が最初から一体になっているキットです。溶接面と呼吸用保護具を別々に選んで組み合わせる手間を省きたい人向けのモデルで、画像でも黒色の自動遮光溶接面と電動ファンユニットがホースで接続された構成を確認できます。


防護係数・防じん区分は3M公式サイトの個別ページに記載があるはずですが、本記事の調査範囲では逐語確認ができず「未計測」としています。デメリットは価格帯が約28万円と他モデルより大幅に高い点で、導入前に事業者側で公式スペックを直接確認することをおすすめします。



3Mのアドフロー577700Jは防護係数・防じん区分を本記事では確認できていません。「未計測」の商品を選ぶ際は、必ずメーカーに直接スペックを確認してください。
導入後の運用で確認しておきたいこと
フィルタは粉じんの捕集とともに徐々に目詰まりし、送風量が低下していきます。本記事で紹介したV3・NMF-500Kのような交換用フィルタは消耗品として、摩耗や送風量の低下を感じた時点で交換する運用が基本です。バッテリー式のモデルは、充電の持ちが悪くなったと感じたら早めに予備バッテリーの手配を検討してください。
面体を装着する際は、隙間から粉じんが入り込まないよう正しく装着できているかを都度確認する必要があります。フィットの確認方法や測定義務の詳細な手順は事業者・専門機関の指導範囲であり、本記事では扱いません。
防じんマスク(DS2)との違い・使い分け
防塵マスク6選比較(DS2規格)で扱っているのは非電動の使い捨て・取替式防じんマスクです。今回の記事は、2021年4月1日施行の特定化学物質障害予防規則改正により、屋内継続作業では個人サンプリング測定+要求防護係数を満たす電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)が求められる、という非電動DS2マスクでは対応しきれない領域を扱っています。
屋外・非継続作業であれば、粒子捕集効率95%以上のフィルタを持つ防じんマスク(DS2相当)でも足りる余地があります。まずはその作業が屋内継続か屋外・非継続かを確認したうえで、DS2マスクで足りるのか、本記事のPAPRが必要なのかを判断してください。
よくある質問
防護係数が高いモデルを選んでおけば安心ですか?
防護係数の大小はモデルの優劣を示すものではありません。屋内継続作業で個人サンプリング測定を行い、その結果から求めた要求防護係数を上回っているかどうかで選ぶのが基本的な考え方です。測定を行っていない段階で高防護係数のモデルを選んでも、その選定が適切かどうかは判断できません。
3MのPL/PS区分が分からないのはなぜですか?
3M公式サイトの個別ページに記載があるはずですが、本記事の調査範囲(ページ容量が大きくアクセスがタイムアウトした)では逐語確認ができませんでした。推測での記載は避け「未計測」としています。導入を検討する場合はメーカーに直接確認してください。
PL1のモデルとPL3のモデル、どちらを選べばよいですか?
作業環境測定の結果と、対象となる粉じんの濃度・種類によって必要な防じん区分は変わります。本記事はPL1・PL3それぞれの製品を紹介していますが、どちらが適切かは事業者側の測定結果に基づいて判断してください。
まとめ
電動ファン付き呼吸用保護具は、屋内継続作業か屋外・非継続作業かという法令上の分岐、測定した要求防護係数を上回る指定防護係数、そして面体形式(直結式かルーズフィット形か)という3つの軸で選びます。防護係数の数字は大きいほど良いという単純な話ではなく、現場の測定結果に見合ったものを選ぶことが前提です。
本記事で紹介した7点は、いずれも実在・購入可能であることを確認済みです。ただし、法令適合の最終判断は本記事では行えません。事業者による作業環境測定の結果に基づいて、必要な指定防護係数・防じん区分を確認したうえで選定してください。



価格は変動しやすいので、購入直前に各販売ページで最新の在庫・価格を確認してから注文してください。